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忍 堪

 
私は物心付いた時から、戦っていた。
死は隣り合わせだった。
母親は死んだ。父親は‥‥。
 
   熱
  砂
 の
 
人生は色々複雑だ。
父親はウロウロしていて、嫌いだった。
他人の所は、なんだかんだ言いながら家族と一緒だ。
私の所だけ違った。淋しかった。
家族なんて要らないと誓った。母親が死んでからは。

あのバカはまだ生きている。
あのバカが頼れるのは私だけだ。
あのバカには情報を流してやる事にした。
‥‥たった一度、裏切る時に必要な信頼を得る為に。



私が仕えるべき主、プリシア様が居ると言う倉庫街へやってきた。
あのバカの弟子が居るらしい。
あのバカの手の平で踊っているらしいが。
あのバカに踊らされる程度の奴なのなら、軽く誑(たぶら)かせるだろう。

失敗した。
あのバカの弟子に興味を持ってしまった。
これが東洋の神秘と言うものなのだろうか。

服従させるべき勝負は圧勝だった。
男としての威厳も何も、在ったモノではなかった。
瞬殺だった。

それが、このバカ弟子の覚悟を決めさせたらしい。
迷惑な話だった。

あながち迷惑でもなかった‥‥かもしれない。
私も興味を持ってしまった、可笑しな話だった。
家族は要らないと誓ったのに、誓いを立てて継続して来た筈なのに。



あのバカは結局の所、御堂との決着(ケリ)をつけるらしい。
私は通風孔から御堂に不意打ちをかける。
御堂を片付けた後は‥‥待ちに待った瞬間がやってくる。

しまった、ばれた!
御堂がこちらに銃口を‥‥。

バン!

視界に血飛沫が跳ぶ。
私に痛みは無かった。
視界に飛び込んできたのは小次郎だった。
あのバカ弟子の小次郎が私を庇(かば)った?!

小次郎の長い前髪から微かに覗く瞳が「心配するな」と言っていた。
私から視線を御堂に移し、銃を構える。

私、小次郎、法条、あのバカの攻撃が御堂の両手足の自由を奪い去った。
刹那、船が揺れた。



御堂の心拍がモニターされていて、
つまり、御堂が死んだらトリスタン号が自沈する、と言う話だった。

実際は違った、四点攻撃の衝撃で誤作動を起こしたのだろうか。
みんなの思惑は外れた。船は沈む。



あのバカは船を作っていた鉄筋の下敷きになっていた。
法条があのバカにすがり付いて、泣き言を言っていた。

私は小次郎を見た。瞳が「助からん」。そう言っていた。
あのバカの目は「法条さんを頼む」と言っていた。



復讐はし損ねた。
あのバカはトリスタン号と共に海の底だ。
引き上げる事は叶わない。永遠に深海の中で過ごす。

‥‥復讐はこれからかもしれない。
あのバカが創れなかった家族を、私は築こうかと思う。
幸い、天城小次郎と言うバカの弟子が居る。
バカに出来なかった事をバカ弟子がする。

これはこれで面白い復讐の方法かもしれない。



今日も砂漠に熱砂の嵐が舞う。
冷めた誓いが熱く焦がされ、空に舞い上がる。
移ろい易い人の想いの様に。

今日も砂漠に熱砂の嵐が吹く。
人の想いを代弁するかの様に‥‥。

 

 はじめまして、カルネアデスです。

 この度はEVEFDPSndの作品群を読んで頂き有難う御座います。

 私は前回のEVEFDPにも参加しておりまして
其の時の担当もシリア=フラット。つまり、前回と同じキャラと言う事です。

 色々と私はシリアの人と言う事になっているらしいので
いいでしょう、やってやるぜぇ!! ‥‥てな感じで今回も
真の赤い扉こと、シリアを選びました。

 この作品はいわゆる初号で見本と言うか。
こういうの書きますというので提出したものです。

 ええ、本番は下にあります。紛らわしくてスミマセンです。
ただ、余裕が無かったら本当に上のだけで提出しようとしていた
事実があっただけです、そうなったら後書きは無かったんです。

 私の後書きは本編より長いと有名で(笑)
では、続きと言うか‥‥ご覧下さい。


 
どんな苦痛も目的の前では無力だった。乗り越えられた。

憎しみ。

この言葉は私と共に在った。

 
   熱
  砂
 の
弐號
 
挿絵:荒琵琶海
 
女の仕事は生命を育むモノ。
しかし、エルディアではどうなのだろうか。
力の在る者は生きる為に技術を磨き、
敵を一人でも多く、それこそ形振り構わずに道連れにする。
それが暗黙の了解だった。



母は私の目の前で嬲られ殺された。
暴行の中、母は究めて微笑みを絶やさず、
瞳は「生きろ」と言っていた。

私も暴行を受け意識を失った。



目が醒めた時にはストールマンの胸の中にいた。
あのバカよりストールマンと共に居る時間のほうが長い。
どちらかと言えばあのバカよりストールマンの方が父だった。
あのバカはバカのままだった。父親ではなかった。

ストールマンの話だと私を助けたのはあのバカらしい。
けど遅い。母は死んだ。

何をしていた。
ストールマンの方がよっぽど父らしい。

バカ親父!
父は二人も要らない。

殺す。己の手で殺す。

目的の在る殺意は力になる。
この国ではそれが常識、当たり前だった。
自らで立証してやる。

それもバカの技術で‥‥実行するのが良い。
そう決めた。

決意した、決意には血液が‥‥自らの血が要る。
身を切る思いをしてこそ、窮地に立った時の切り札となる。
母なる大地に血を捧げ、誓いを立てる。

そうする事を‥‥決めたのよ。

 
エルディアを形作る砂の大地。広大なる砂漠。
此処に誓いを立てる。この国の人間はみんなそうなのかもしれない。
近くにあって、けど、深入りする事は即、死に繋がるこの場所。
誓いの道標にはもってこいだと思う。

今日は例年にも無いほどの砂嵐の日。
この日ほど相応しい。
誓いの日には相応しい。
生命を賭けるに値する。
こんな所で朽ち果てるのならば、
この誓いを立てるに相応しくは無い。
私は誓いを立てた。

血が砂嵐に吸い込まれて行く。
私の血液が空に舞い上がる。
砂色の嵐が、熱砂が私の血を求め、大きく唸る。

砂嵐が紅く見える。私の血を吸って更に紅くなる。
私の視界が朱に染まる。蒼い空が朱に染まる。
太陽を直に見たような、視界が真っ白になった。
身体中に熱砂が纏わり付くのを感じた。
視界は回復しない。ただ‥‥真っ白い世界を映している。

 
誓いは立った。
 
あのバカに助けられたらしいが‥‥覗き見ていやがったな、くそっ!

結局、このバカがやっていた覗き見は私の特技となった。
所属部署で私の右に出るものは、あのバカでさえ出来なかった。
気配を完全に消していたら、例え隣に立っていようとも
その存在が目には映らないというこの技術、暗殺術での最高の技を。

助けた事を後悔させてやる。

ストールマンもストールマンだ。
態々そんな事を教えてくれなくてもイィのに。
結局、血が必要なのか。父である為には血が必要なのか。
私はあのバカよりもストールマン、貴方に父であって欲しい
と切に想っている。なにの何故だ。何故あのバカの肩を持つ。
代弁する。この誓いを境にストールマンとも距離を取る事になった。

新たな誓いの前に過去とは距離を取りたかったのかもしれない。
誓いは立てても人間性はまだまだだと自覚していた。

 
あのバカが留守の間に私はエルディア情報部と言う組織に入った。
結局の所、留守だと思っていたバカに騙されていたのだが
そんな事はどうでも良かった。強くなる事が先決だった。
強くなろうとする者を拒む事が出来ないのがこの国、
エルディアの現状だったから。

この事であのバカは私を育てなくてはならなくなった。
組織内の人間を鍛えるのは組織の幹部としては当たり前の
最低限度の摂理だったから。実の娘だろうが組織に居る限り
特別扱いなどはあろうはずが無かった。

 
私はプリシア様に宛てがわれた。
特に理由が無かった。

ただ、
プリシア様に気に入られただけだった。

女だから宛がわれた訳ではないと思いたくは無い。
それだけだった。



戦局は困難を極め、警備と言うものは無力に等しかった。
事実、警備と言うものは存在していなかった。

裏切りはそれこそ日常茶飯事、
同じ釜の飯を食べた者同士が、それこそ肉親も含まれた。
裏切りは誰の下にも平等にあった。

いずれ裏切ろうと思っている私には拍子抜けする出来事だった。
理由が歓楽的すぎる。理想も無い。流行だから裏切りをしているような連中。

反吐が出た。

警備に当たっているモノでさえ裏切る世界。
まさに力こそが全ての世界だった。

そんな最中、私はプリシア様の警備に宛てられた。
はっきりと言って、どうかしているとしか思えない配置だった。

プリシア様もそんな状況を知ってか知らずか、私に纏わりついた。

そんな事が、時間が、楽しくて仕方が無かった。
だけど、そんな時間が‥‥そう思う自分の心が我慢ならなかった。

あのバカの為の、復讐の炎を絶やす訳にはいかなかった。

そんな時、プリシア様は頬を膨らませる。
私の心の奥底まで見透かすように‥‥そして、
私は其の可笑しな表情に、少しばかりの顔の緊張を解く。

そうしないと私の頬を引っ張るから‥‥これも警備の仕事と諦めた。



そうこうしているうちに私はプリシア様の前だけ、自然に振舞えた。
まるで呼吸をする様に、肩肘を張らなくなっていた。

あのバカの差し金だったのだろうか。
何故プリシア様に宛がわれたのが私だったのか、
今から思えばそんなところだろう。

素直にストールマンを宛てておけば、
何事も穏便に、波風も経たずに終わっていたはずなのに。

御堂もディーブも、あのバカも。
私が困る顔を見ていたに違いない。

このシナリオはあのバカが書いたんじゃないのか?
‥‥恩を売って置くことにしよう。

 
後悔した、プリシア様を独りにした事に。
侍女が裏切った。私はそこには居なかった。

私がプリシア様の尋常ならざる絶叫に駆けつけた時。
眼に止まったモノはプリシア様の赤いドレスだった。

常に白を基調とした装いをしているプリシア様が‥‥。

そう、侍女の血がプリシア様を覆っていた。
その侍女の首筋にはナイフが突き立っていた。

プリシア様が自らの手で危険を回避した。
けど、プリシア様に手は汚させたくなかった。
白いドレスが、鮮血に染まったドレスが、もう二度と、
その穢れ無き白の日を取り戻せないように‥‥プリシア様は
私たちと同じ世界に来てしまった。後悔せずには居られなかった。
自分が許せなかった。あのバカよりも許せなかった。

御堂とディーブは平然としていた。
バカとストールマンは渋い顔をしていた。
義父たる国王は‥‥「それでこそ我が姪」と「表向き」は喜ばしかった。

そう‥‥結局「表向き」の情報しか私は集められなかった。
「表向き」の意見なら想像する通りだったし、想像がついた回答が帰ってきた。

私だってそう、腹の中ではあのバカの為、
復讐の為に生きているようなものだ。実際の所は判らない。

 
‥‥私の心境は複雑だった。

この世界では、砂漠では、エルディアでは。
力が無ければ生き延びられない。

それは常識だった。

国王の血族だからと言って例外など在ろう筈は無い。
プリシア様の手が汚れた日。

私があの砂漠で誓いを立ててからどれだけ経ったのだろうか。
あの例年に無い砂嵐を観測した日に。

皮肉な事にそれと同じ日時にプリシア様は
私達と同じ世界に立った。血で血を洗う、
狩りの為では無い、殺し合いの舞台に。

この国では当たり前なのに、だけどプリシア様には
そんな事をさせたくない‥‥と思った矢先の出来事だった。

アレから数日間、プリシア様は私から片時も離れようとしなかった。
砂漠特有の乾いた風も二人の間に割り込む事は叶わなかった。
ただ、私はプリシア様を抱きしめる。それだけだった。

その事が、そのプリシア様の行為が、共に寄り添い合った時間が
一分一分、一秒一秒が強くならなければならないと心に強く、
時を刻む秒針の様に心に深く‥‥刻み付け続けた。

もっと強くなろう‥‥そう思った。
夜風は冷たかった、昼の熱風は何なんだろうと思う。

昼間はプリシア様が張り付いているので熱かった。
それ以前に寒気がした。自分自身の後悔に。

夜はプリシア様のお蔭でお互いに暖めあった。

まるで鉄を鍛えるように。
私の心も、強くあろうと鍛えられていった。

この気候の中では砂漠の岩は砂に換えるが、
私の心はどんどん鍛えられていった。

心意気は、志気は上がった。
プリシア様から解放されたらもっと技術を磨こう。

まさか、復讐以外の目的が出来るなんて思いもよらなかった。
力なんて、くだらないモノだとばかり思い続けていたのに。

‥‥ちゃんとあのバカには復讐する。そのついでに力を
技術を磨くだけだ。そう、そうだからな。そう決まっている。

 
あのバカはシッポを巻いて逃げ出した。
あのバカが自ら発案したモノ、それから逃げ出した。
あのバカの行動は今まで不可解だったけど、今回の事で解った事が在る。
あのバカは人間だ。
あのバカはれっきとした人間だった。
あのバカは自分の発案したアレが現実味を帯びるにつれ変わっていた。
あのバカは自分自身の行ないに恐怖した。
あのバカがオドオドした所なんか見た事は無かった。
あのバカは何時も誰かを煙に巻いて、それでいて自分は平然と構えているだけだった。

そのバカが逃げ出した。
人間らしい恐怖を持っているのだと見せた。
形振り構わずに逃げた。

エルディア共和国、東洋人幹部の三つの席の内、一つが空席と化した。
あのバカの逃亡をもってして‥‥。

よりにもよってプリシア様の生体人形とは‥‥あのバカにも呆れ果てる。
内乱に一応の決着を見た今、情報部は縮小の一途を辿る。
そんな時に持ち上がったアレの製作。

発案者はあのバカ。
内容は生体クローンの製作。
運用目的はクローン兵士による戦力増強‥‥だったのだろうか。
だいぶ前に上がっていた計画だっただけに覚えている人間は
極少数だと思う。そんな計画が現実味を帯びて我らの前に現れた。

あのバカが抜ける前にあった戦闘で被害が甚大だった事が記憶に新しい。
わざと被害を大きくしたのじゃないのだろうか、と思う。
自分が抜けるから。自分への追っ手を減らす為。自分の為‥‥
自分が恐怖から逃れられる可能性をほんの少しでも上げる為に。
確かに不自然な被害が多かった、真一文字に掻っ切られた首筋。
不意打ちにしか見えなかった。あのバカにはそう出来るだけの
技術があった。あの隠密術。可能性は否定出来なかった。

結局、桂木の抹殺は無期延期とされた。

前回の戦闘被害が尋常ではない為、
かなりの数の戦士を、一から育てなければならなかった。

一目散に逃げ出した筈のあのバカからの手紙があった。
「情報をくれ」それだけだった。願ったり叶ったりだった。
蒸発された訳ではなかった。皮一枚繋がった状態になった。
復讐の対象が夜逃げなんてと落ち込む前で良かった。

丁度、私の訓練場は砂漠だった。
監視が付いていてもこの中を尾行出来る腕を持った者は
情報部には居ない。あのバカが消したから。
消えたように見えるだけかもしれない、行方不明になった者も居たから。
実際、あのバカが引き抜いて、伝令係を務めている者もいる。
その者に、追っ手を追い払う砂漠の中であう。

さすがあのバカが引き抜いただけあって戦闘能力は中々のものだった。
砂漠を徘徊するだけの持久力、精神力、体力。
今はあのバカに引き抜かれた者との戦闘訓練。

訓練は、毎日が充実していた。

 
ついにこの日がやってきた。
アレがついに動き出した。

アクア様の記憶。
あのバカの戦闘力。
プリシア様の遺伝子。

そして‥‥国王に返り咲くべく動き出した国王。



不安定な国王の筐体であるμ−101の改良を進める
ドールマンはストールマンに殺された。親殺しだった。

戦慄が走った。私がやろうとしている事はこれなのだと
マザマザと見せ付けられた。

目眩がした。
それと同時に国王には、後が無くなった。

かつて国王は、μ−101の試験期間に
逃げ出したあのバカが使っていたコードネーム「テラー」を継承し、
その名を以って自らの肉体を葬り去った。

俗に言われる「エルディア国王暗殺事件」。

表向きは病死と言う事になっている。
それなのに暗殺事件と呼ばれるのはそれ相応の理由がある。

その犯行はテラーを名乗るものに行われたと噂されている。

その噂は裏の世界で瞬く間に広まっていき、
エルディア情報部の裏の顔、殺し屋集団テラーとしての
知名度は上がっていった。依頼は殺到した。

もっとも、テラーがエルディア情報部である事を知る人物は皆無だった。
知っている者はテラーの冠を継つ者が粛清を与える。それだけだった。

噂では無い国王が亡くなった要因は国王が自らの手で、
自分の古き肉体を葬り去っただけだった。

あのバカの亡霊は‥‥コードネーム、テラーは薄汚れていった。
逃亡の代償として、金で動く汚い殺し屋の総称となっていった。
逃亡しているあのバカにはどう映るのだろうか。
自らが名乗っていたあの名が、恐怖を冠する、自ら付けたのか
畏怖の念から呼ばれることにだけかもしれないあの名が。
一人歩きしていくのをどう感じているのだろうか。

前の身体を残しておけば‥‥と悔やまれる所だったのかもしれない。
クローン筐体ではない国王の身体を治療すればどうにかなったかもしれない。
不安定なクローンの身体ではなく、人間の身体があれば‥‥と。

しかし、アレは楽しそうだった。
人生を何度でもやり直せるほど甘くは無い。
それを知っている。

それとも部下のやりたい様に自分も
同意して見せているだけなのか。解らない。
ただ、国王たる器がある事だけは解った。
例え元の肉体を捨て去り、別の肉体に宿ろうとも、
その意思はそこに在った、死んではいなかった。

あのバカが逃げ出した理由が何となく解った。
こんなのはなんか違う。違和感が在る。
発案したのが自分ならば尚更だ。

ドールマンを殺害したストールマンは
プリシア様を伴って逃亡した。

‥‥私も追っ手として。
あのバカの生まれた国、日本へ。

 
エルディアとは大違いだった。
何も知らない平和ボケと言うらしいが。
そんな人間が右往左往している世界。日本。

テラーの一員として西洋で仕事をした事もあったが、
やはり、砂漠の方が居心地が良かった。

何度でも思う。こんな所は私の世界じゃない。
しかし任務の為だ。

この日本で、
プリシア様が命名したトリスタン号の上で次期国王が名乗りをあげる。
その為にこの日本でも活動可能な人間が必要だった。
私もその一人だ。

この劣悪な環境で国の人間が居ないと言うのはおかしい。
次期国王が決まると言うのに日本人に手伝ってもらうのはもっと滑稽だろう。

本心は、プリシア様を守りたい。
国王を再び、国王にはしたくなかった。

老兵は黙って去って欲しいと思っている。
しかし私は情報部の人間。そんな事は百も承知だ。

 
この環境になれた頃、ボスであるエルディア情報部次長ディーブが
私をエール外国人学校の教員をするようにと御達しがあった。

ストールマンがそこのディレクター、校長を勤めているらしい。
断る理由も無かった。私は教員になった。

しかし、ストールマンは居なかった。
不在だった。長期休暇を取っていると言う事だった。

一安心だった。これでストールマンを捕らえずに済む。



私に監視が付いているのは明らかだった。
気配の絶ち方が下手すぎる。それなりの技術はあるようだけど
相手が悪い。相手は私なのよ。そんなんじゃ駄目。

あのバカよりストールマンよりと言う事を疑っているらしい。
それは正解。だから、私はストールマンと会いたくは無い。
今まで会い続けられない事が奇跡だった。

だけど、現実とは皮肉なものね。

私は、ストールマンと遭遇した。



監視付きのこの状態では捕まえる以外の選択肢は無い。
それは私がストールマンを亡き者にする事と同意だった。

ここで逃せばあのバカへ情報を流せなくなる。
あのバカは限りなく私に依っている。

その内の一つ、
刑務所と言う日本の保護下にあったあのバカに、
情報を流した事が記憶に新しい。

情報部は刑務所ごと襲撃した。
それより早く、私の情報により高飛びしていたと言うのもまた事実。

二律背反‥‥こんな事が起こるなんて思いもよらなかった。
ストールマンを拘束した。涙は零れなかった。

本当に哀しい時、涙は流れないものなのだと、知った。

 
ストールマンはプリシア様に暗示をかけて野に放ったと言う。
無茶をする‥‥人の事は言えないか。

砂嵐を前に、血だるまになった私にその科白は似合わなかった。

放った場所はトリスタン号が望める場所でありながら、
あのバカが鍛えたと言う弟子が居る場所、倉庫街だと言う。

‥‥何時の話なのだろうか、何時暗示をかけたのだろうか。
情報が少なすぎるわよストールマン。

情報を集める情報部でもプリシア様は行方知れずなのに、
情報はその一つだけだった。無茶苦茶だった。

プリシア様が移動していたらどうにもならないと思っていた。
事実、思惑は外れた。外れていたらオオゴトだった。

あのバカ弟子の性格を見抜いていたと言う事なのだろうか?
あのバカ弟子の下にプリシア様は居た。
傷物にされていないかが不安あった。

その時は不本意だけどディーブに拷問を依頼しようと思った。
彼の拷問術は異状だった。残酷さにおいては群を抜いていると思う。

 
高飛びから帰ってきたあのバカは女連れだった。
‥‥反吐が出る。

日本国の公僕らしいが怪しいものだ。
口からでまかせだろうと思っていた。
違った。

エルディア情報部部長兼駐日大使、ロス=御堂からの裏付けがあった。
国王の護衛を頼んだ人物、法条まりなだった。

‥‥何処までが本心か判らないわよ、シリア。
油断しちゃ駄目よ、心を許す事をするべきではない。このバカに。
御堂の裏付けがあったとしても‥‥このバカには‥‥‥‥。



法条まりなは良くやっているが御堂が仕掛けている罠は癇に障った。
国王を襲わせて法条でそれを防ぐ、マスコミはそれを報道する。
プリシア様は不利になる一方だった。世論は国王よりになっている。

丁度、法条の方も私の動向が気になりだしたらしい。
ちょっかいを出してくるようになった。対決の時は近い。
そう思った。御堂の罠が二人の距離を限りなくゼロにして行った。

 
そして‥‥。
 
対決の時はやってきた。果し状を出した。匿名希望で。
時同じくして学校の方に公僕が忍び込んでいたので
それを利用させてもらうような文章にした。

ベンチには水をまいた。
これで座って待つと言う事は出来ないだろう。
その隙を付いて観察させてもらうことにしよう。
法条まりなの性格を‥‥。



平和ボケしている国にしてはまともな人間だと思った。
それなりに隙が無かった、独りであってもこの隙の無さ。
普段からこの状態なのかと驚かされた。

久しぶりに身体がうずいた。闘ってみたいと思った。

 
闘いは私の負けだった。あのバカに邪魔された。
国王にも。散々なものだった。まったく‥‥ついてないわね。

 
尽くすべき国王に手を出してしまったので情報部に追われる事になった。
だが、ディーブは匿ってくれた。御堂と仲たがいをしているのかもしれない。
こちらとしては願ったり叶ったりだった。

プリシア様が傷物になっていないかを調べる事にした。
大丈夫なようだった。

その情報を聞き出す為にバカ弟子とは勝負した。
身体を重ねる事を。

あっけなかった。私の気持ちはまったく高まらなかった。
バカ弟子はあっさりと果てた。

そして、私に惚れた。‥‥私も惚れてしまったらしい。
なぜかこのバカ弟子の事が気になりだした。

 
バカ弟子はボスに捕まった。つくづくバカな奴だ。
バカ弟子の情報屋も、等しくバカだった。

自らの利益の為に死んだ。その割に安らかな死に顔だった。
覚悟の上だったのか‥‥。

バカ弟子が危機に陥った時、騒ぎが起きた。

そう、本当のバカがやってきた。

桂木源三郎、エルディア情報部のエースだった男。私の父。

彼のコードネーム「テラー」は
今の情報部で使用、活躍している。悪名は高い。

ボスは賢い男なので、さっさと退却した。
情報部一の残虐男も、テラーの前では形無しだった。
実力の差がありすぎる。それが解るだけ。
幹部であり続けられるのはその引き際を間違えないからだろう。

バカ弟子は、この隙に逃げ出せただろう。
今はそんな事より、本当のテラーの相手をする方が先だった。

 
結果。軽くあしらわれた。実力の差は広がっている。
この差は縮まることが無いのか。絶望感が私を襲う。

私は、夜道を宛ても無く彷徨った。

 
プリシア様を見つけた。
存在自体思い出さないようにしていた私の「姉」と一緒に居た。
桂木弥生。

妙な感触がした。見つめていられなかった。
見つめ続けていると視界がぼやけそうになった。
視線を外した。大局的に視線を合わせるようにした。
プリシア様を見ないと言う訳には行かなかった。
玉葱を切っているような感覚だった。

辛いけど‥‥続けなければならない。
まさにそんな状況だった。

プリシア様は桂木弥生と一緒に居る。
桂木弥生は法条まりなの知り合いだったようだ。
法条まりなはあのバカの紐‥‥は逆か。

あのバカの手の平に居る感覚だった。
癪に障った。気に喰わなかった。

不意に思い直した。そのバカに情報を与えているのは誰だっけ。
私だ。私が情報を与え、あのバカの手の平で踊っているのか。
何なんだこの状況は。気に喰わないな。

‥‥おっと、感情を乱すと法条にばれてしまう。
平静を保て‥‥平静を、平常心だ。

 
トリスタン号、プリシア様が命名した船。
この上でエルディアの王位が‥‥戴冠式が行われる。

プリシア様は不利だ、不利なままだった。

国王の証たる国璽。これが無かった。

極端な話、これがあれば誰でも国王になれると言う証。

対抗馬たる御堂真弥子が持っているのだろうか。

もう時間は無い。奪うにしても時間が無い。

 
御堂真弥子が国璽を出した。
くっ、私がもう少し速く動いていれば。

私の焦燥感とは裏腹に、御堂真弥子はプリシア様に国璽を手渡した。
そして、あのバカ弟子と婚約したと公表した。

‥‥なに?

国璽を捨てた? いや、それより何故あのバカ弟子?
腹が立った。無性に腹が立った。

私に惚れたんじゃなかったのか?
バカの弟子だけあって二股も当たり前なのか?

 
プリシア様が王位を継承した場合に限り、
ロス=御堂の逮捕を任務にトリスタン号まで
やってきた法条まりなが動き出した。

あのバカ弟子の事はとりあえず置いておこう。
御堂を拘束できるのならば情報部も解体に追い込める。
それは都合のいい事だった、是非とも協力させてもらいたかった。

反乱の種は、根こそぎ剥ぎ取ったとて生れるモノ。
今までの人生がそうだった。戦いの中で凌ぎを削りあってきた。
ほんの一握りの要因から種は芽を育み、脅威となった。

もうプリシア様を危険な目にあわせたくない。
情報部を寝返らせる事は不可能に近い。
ならば方法はただ一つ。御堂を潰す。

それだけだ、それだけしか選択肢が無かった。

 
あのバカがやってきた。いいタイミングだ。狙っていたのだろう。
もうあの計画は止まらない。止められない。常人には。
けど、バカなら止められる。共に生きたあのバカと御堂には
介入の余地があった。ダメだったらかつての仲間を斬るのか。
あのバカは今、大いなるツケと向き合おうとしている。
そこに隙が生れる。御堂を取った瞬間、私はバカを狩る。
その為の人生だ。目標を達成した人間は脆い。

 
広い通風孔だった。御堂のやつめ。こんなモノを再設計をしていたとは。
この通路を使えばどの部屋にも優先的に出られるじゃないか。

お蔭で私は楽を出来た。天井裏から御堂に近付く。

いたいた‥‥っ、プリシア様が人質になっている。
法条め。傷物にしたら許さないからな。
御堂は初めから許す気が無いのでどうでもイィ。
バカは‥‥気配を絶ったまま接近中か。
音は消せないからね、慎重に移動しているわ。

にしてもあのバカ弟子‥‥なんで御堂真弥子なんだ。
やっぱり男って奴は若い方がイィのか?

私の胸をマジマジと見ていたくせに‥‥胸だけで我慢できないのか?

‥‥って、しまった。法条がこっちを見ている。
当然、御堂もこっちを見上げ銃口が‥‥。

ああ、小次郎のバカ。お前の‥‥お前の所為でぇぇ!!!!!!!!



バン!



条件反射的に目を閉じてしまった。不思議と痛みは無かった。
痛感が失せる衝撃を受けたのだろうか?

恐る恐る視界を開くと視界が赤かった。
だけど視界は確保できた。私の前に青いジャケットの長髪がいた。
天城小次郎だった。天城小次郎に庇われた。

それで私の気をひいたつもりか?
それでも構わないぞ、私は。
後で日本伝統の土下座とやらでもしてもらうからな。

視線が嬉しかった‥‥かも。
口元が緩んでいる‥‥可笑しな話。
悪い気はしないわね。

くっ‥‥尾行されているのにすら気付かなかった。
そんなのだから法条にも見つかってしまったのだろう。

バカ弟子は視線を送ってきた。
長い前髪から微かに覗く瞳が「心配するな」と言っていたように感じる。

私を撃ったつもりの御堂には隙が生れた。
撃たれたのはバカ弟子だったからだ。
その隙にプリシア様は御堂の手から離れた。

好機が生れた。

バカ弟子は御堂に向けて銃口を構えた。
右手の銃が仄かに赤い。御堂の銃を右肩で受けたらしい。
斜線は下向きなので血が銃口に入る事は無いだろう。

私も振り下ろし気味にナイフを投げる。
バカと法条も銃を構える。行動はみな、同時だった。

 
バカ弟子だけは話を聴いていなかったのだろう。

御堂の心臓はトリスタン号の心臓部に監視されている。
御堂の心臓が停止したらトリスタン号の心臓も同じ道を辿る。
それが御堂の切り札だった。

つまり、話を聴いている訳が無いバカ弟子が
脳や心臓を打ち抜いていたらそれで終わりだった。

手っ取り早く反撃を無くすにはそうするのが基本、
というよりそれ以外に手は無い。捕殺か捕縛か。前者の方が容易なように。

それでも外したのは流石と言うか才能と言うか勘と言うのか平和ボケと言うか。
中々面白い男だと思った‥‥くっ、さっきの事を許した訳じゃないからな。

他の三人は御堂の動きを封じる行動に出ていた、
互いに干渉しあわなかったのが奇跡と言うべきか。

御堂は両手足を各人に攻撃され、床に這いつくばった。

あのバカが葉巻に灯を入れる。
煙を肺に入れ、長い間そのままで、その後ゆっくりと吐き出した。

そして御堂に近付いていく。
この中で、まともに動けたのはあのバカだけだった。

みんな、金縛りにあったように動けなかった。
バカの行動をみんなが注目していた。

御堂の眼鏡が鈍く光った。



‥‥天城小次郎、こいつの前で、あのバカを狩れるのか?
あまり気持ちの良いものじゃないような気がしてきた。
何故だ、此処に来るまでどれだけの時と労力と犠牲を払ってきたと言うのだ。

一時の感情の為だけで今までのモノを棒に振ってもイィのか。
それも費やして来た時間の中で日本に来てからまだ先程の、
ホンの些細な出来事じゃないか。

そんな突発的な出来事で今までの努力を、想いを、誓いを!!

応えろ。シリア=フラット!!

貴様の達成したかった事は一体なんだったんだ。
解っている筈だ。その為の人生だと。それが全てだと!!!!



新たにナイフを取り出し、見つめた。
酷い顔だ。ナイフに映る私の顔は。
小次郎の返り血を浴び、所々を紅化粧した顔。

そんなものは微々たるモノだけど、
プリシア様に頬を引っ張られる前の、
世界に絶望していた頃のような悲痛な表情。

迷いが表情に出過ぎている。
私はナイフを握る手に力を込めた。
この迷いに負けない意志を搾り出す為に‥‥。

 
突然、船が揺れた。

不沈船として設計されていたトリスタン号に於いては想定外の揺れだった。
異状の一文字しか当てはまらなかった。そう言わざるをえなかった。

御堂は死んでいない、なのにこの揺れは何だ?!
御堂の視線を見る、眼鏡の乱反射で視線は読めない。
ただ、口元は緩んでいた。まさか‥‥!!

 
予想外?!
 
冷たかった、砂漠の夜とはまた違う寒さだった。
身体中が圧迫されるような感覚‥‥。

瞼が下りていた。瞼を押し上げると冷たかった。
目が焼けるかと思った、高温でも火傷するけど
低温でも火傷するんだったな。妙な話だ。

どうやら御堂のハッタリ通り、船底に穴があいたようだ。
船内に水が入ってきている。結構な嵩まで来ている。
こんな状態になるまで気絶しているとは‥‥我ながら。

不意に温もりに気がついた。
これだけの嵩があるにも関わらず全身が冷たくなかった。

そちらを見た、プリシア様に抱かれていた。
ドレスはびしょ濡れだった。

私がプリシア様を見ると、微笑んでくれた。
そして視線を泳がせた。その視線を追うとバカ弟子が居た。
バカ弟子を睨んだ。プリシア様を水の中に居させ続けるとは。
バカ弟子はばつの悪そうな顔をして肩をすくめた。
つまり、プリシア様の意思と言うことか。

バカ弟子も視線を泳がせた、その先に居たのは法条だった。



プリシア様を小次郎に預けた。
両肩を被弾しているらしく肩が上がらないようだ。
なるほど、だから私の方を移動させる事が出来なかったのか。
そして「オヤっさんは‥‥」と、語尾が悪く呟いて、口を閉ざした。



私はすぐさま行動した。法条が騒いでいるのは知っていたが。
浸水してきた水が重い。足取りが重い。直ぐの距離がやけに遠く感じた。



法条の元へ行った。あのバカが船の柱の下敷きになっていた。
法条の瞳は涙で濡れていた。胸が痛んだ。

あのバカは多くは語らなかった。
それだけ重いものが載っているのだから、声を発する事自体、辛い筈だ。

あのバカは法条と言葉を交わしながら定期的に私の方を見た。
この方法は‥‥モールス信号か。

「彼女を頼む」‥‥か、どうしようか。
その間も法条の瞳からは涙が溢れて来る。
この水嵩、法条も手伝っているのか。‥‥それは困るな。

私は法条に当て身をいれた。
混乱した隙を突くのもアレだけど。その内勝負してあげるから我慢なさい。
法条は私を睨んだ。そして瞼を閉じた。大人しくなったわね。

‥‥私もこう言う視線をバカに向け続けていたのだろうか。

別れに言葉は要らなかった、視線だけで十分だった。
私達はトリスタン号を脱出した。

あのバカと御堂は仲良く柱の下敷きだった。
助けようが無かった。

 
国璽は海の底。あのバカが国王に選ばれたのだろうか。
 
さよなら。私の――――――――。
 
挿絵:荒琵琶海
 
熱砂の嵐
(順不同・敬称略)
 
校正協力等々々...記入漏れがあったらすみません。
 
nik
QED
TKM
WIZ
エル
まり
湖南
静夜
統奈
MIYA
ひろえ
ブギー
りょう
天龍帝
TokitA
glock22
荒琵琶海
神楽鬼姫
北海の熊
八崎節子
かなものや
水乃もとは
パラサイト
 
原作
    C's ware
      EVE burst error
        http://www.csware.co.jp/


挿絵
    あるちざん。
      荒琵琶海
        http://www.geocities.co.jp/Playtown-Darts/9066/


文章
    カルネアデスの頁
      カルネアデス
        http://www20.big.or.jp/~karune/gate.htm
 
次期国王候補はトリスタン号と共に皆、運命を共にした。
プリシア様を除いて。

快く思っていないも者達はプリシア様を非難するだろう。
次期国王候補の唯一の生き残りなのだから。
裏工作をしたと思われても仕方が無いところがある。

しかし、もうプリシア様を脅かすような武力は存在しない。

情報部もまたトリスタン号と共にあった。
だから、私が傍に居る必要も無いと感じた。
復讐するべき対象も今は居ない。

私の戦いは終わった。

 
私は日々、砂原を眺め続ける生活を送っている。
眺めながらも身体を鍛えることを忘れないのがおかしな所だった。
最近はほどほどにしている。

面白い事はあった。あのバカ弟子が私を追ってきた。
髪の毛の中まで砂まみれだったのは、正直笑えた。
涙が出た。死ぬかと思った。

命を掛けない状態でも死ぬような事が起こるんだなと。
そう思うと余計に笑いが止まらなかった。

正直に楽しいと思えた。

 
「憎しめるだけの愛があったんだろう」と小次郎に言われた。
気恥ずかしいけど、あのバカへの感情はそうだったのだろうと
思えるようになってきた。そんな時に小次郎がポツリとそんな事を言った。
全てお見通しか?

うん? 子供の名前か。
「源三郎=F=天城」にするか?

同じ名前を持つ人間に、憎しみではない感情を。
過ちは繰り返さないように‥‥そう、名付けるべきなのだろうか。

大丈夫だ、小次郎は浮気者だ。女好きだ。
だから女が産まれる‥‥確率が高い。

そういう意味で、あのバカは女好きだったのだろうか?
ただ、娘を取られる緩衝材の代りに、
その辛さを紛らわせる為に生れた方便なのかは解らないが。
女好きには女が産まれると冷やかされる事もある。

うーん‥‥女の名前は思いつかないな。

ふふふ、お腹の赤ちゃん。男の子かな、女の子かな。
今までの人生が嘘みたい。こんな些細な事で楽しめて。

 
憎しみが昇華すれば、それは愛になる。
私があのバカに抱いていた感情は‥‥
未熟な愛だったのかもしれない。

お腹にはバカ息子との‥‥子供が居る。
愛を堕落させれば‥‥憎しみだ。

再び誓うか、この母たる砂の海に。
父は‥‥水の海に眠る。

小次郎の血と共に、エルディア砂漠の空を。
私達の誓いが舞い上がる。

違和感がある赤い空。この光景は心に残る。
何時もの青い空ではないのだから。

もう直ぐ私の‥‥私達の子供が産まれる。
この子には、赤い空を見せたくない。

もう赤い空は消えた。風と共に血は四散した。
青い空だ。

この子には青い空が相応しい。
そうあるべきだと。感じていたい。

感じられるように‥‥。

今日も乾いた風が吹いた。この様子だと今日も嵐が吹き荒れるだろう。
その嵐を形作っているものはいろんな要因が互いに協力し合って出来ている。

風と砂と。

人の数ほどの砂は嵐という名の風に乗って何処まで行くのだろうか。
ましてやココは砂漠の大地。焼け付くほどの熱砂が広大に広がる場所。

想いと人と。

地平線まで続く砂漠に吹き荒れる嵐はこの熱砂を何処まで運んでいくのだろうか。

風は想いで、砂は人か。

あ、今、お腹を蹴ったな。
中から蹴られているのにお腹を蹴ったとは奇妙だな。
ははっ、何を考えているんだ。私は。

うん、元気だな。これは男だぞ、男の名前しか決めないからな。
男として生まれてきて欲しいな。別に女でもいいけど。
希望としては男かな。

あ、また蹴ったな。こいつめ。はははっ‥‥。



ふと顔を上げると砂塵が舞っていた。嵐が生まれる瞬間だった。
これから大きくなって人の想いを飲み込んで、そして消える。



私の中にも命が宿っている。
これから大きくなってそして‥‥。



‥‥‥‥。



もう、復讐なんて言葉は――――――――。



暑い風が吹いた。

 
「ふふ‥‥この後どうなったと思う?」

「ううう‥‥」

「‥‥恐い?」

「‥‥うん、こわいよぉ」

「お話の続き、やめる?」

「‥‥いやだ」

「‥‥へ?」

「もっとお話して」

「そう‥‥けどね。続きは明日にしましょうね」

 
「おやすみなさい、源三郎」
 

後書き

 こんばんは、カルネアデスです。

 長かったと思います、私自身えらい長いものを
書いたなぁと思っております。短いのが趣味ですので。

 自分自身、読む時間も無いので手短に読める作品を
好んでおります。長い作品は切り上げが難しいので
読む方も疎遠と為っておりまして。

 折角のお祭騒ぎですのでその壁は取っ払ってしまいました。
狙った訳ではなく外れてしまっただけです。

 元々、初号のだけで済ませようとしていたぐらいですので。
そうこうしているうちに参加者がどんどん増えましたので
そうも行かなくなってしまったというのが経緯です。

 多数の方々に校正等々をお願いいたしまして、
その意見も手伝ってここまで書き上げられたというのが正直な所です。
初号以降、構想はあるけど形になるなんて思っていませんでした。

 私だけで作品を書き上げるのはもう無理だと思っています。



 挿絵担当の荒琵琶海さん、ご苦労様でした。
お忙しい中、申し訳なかったです。今回の事は嬉しい誤算でした♪

 一発でイメージに当てはめるような事しないで下さい(怒)
下さいまして楽させていただきました。何もしなくても良かったので(笑)

 そのお蔭で執筆に萌えた(誤植ではない)のは秘密です。

 挿絵が文章を上回るのは‥‥それはそれで美味しい作品なのですが
ポンポンと出てきたので好としましょう。いやぁ‥‥どうなるかと思った (^^;



 各作品の見所を

EVE burst error − シナリオの優秀さ。
EVE The Lost One − アニメーションへのこだわり。
EVE ZERO − キャラクターのかわいらしさ。
EVE The Fatal Attraction − ワクワクするような展開。

 なんて言っていてはいけません。

 まずはシナリオありきでしょう。ねぇ、姫屋さん。
そんなこんなでシナリオ頑張ったです、挿絵に負けないように。

 ホントは別件で使う予定の科白回しだったのですがね。これって‥‥。





 題名の方は初版から熱砂の嵐に決めていました。
前FDのパラサイトさん作、砂漠の風が元になっているでしょうねぇ。
それだけ記憶に刻まれている題名だったのだと思います。
私の単語集が少なすぎると言うだけですけど(爆

 始めは風にしようかと思ったのですけど、
それはパラサイトさんがやっていたのを思い出したので嵐にしてみました。

 丁度砂嵐が連想できる砂漠が舞台でしたので。
私の作品って題名に沿った話になっているのでしょうか。
題名と雰囲気違っていらごめんなさいね。

 私には仮題や仮名が良く似合います。
題名より作品を‥‥という人間ですので。



 今回は無声で行こうと思っていました。

 前回が科白ばっかりでしたので正直科白を書きたくなかったんです。
構想が洒落にならなくなりそうだったので‥‥。

 本当はまったく無い予定だったのですけど書いてしまいました。
後悔はありませんが。

 最後の語りは担当希望出してもいいカナと思いましたけど、
解る人は想像してくれているから良いでしょう。

 PC98版の、オリジナルの仕様でお楽しみください。
オリジナル版は声ないんですよ。テキストおんり〜。



 さて、シリア=フラットが生きているお話です。
正月(2002/01)あたりにこういうネタ考えていたのですけど。

 うまい具合にお祭の正式発表が出たので参加と言う事になりました。
仮発表時から狙っていたのかもしれませんがそういう意識は無かったです。

 前回のFDを読まれた方は足りない所をあちらから拝借して戴いて
ゲームしかプレイされていない方は
ゲームから拝借みたいな楽しまれ方をされたのならしめたものです。

 同じ事を書いても仕方が無いかなと思い、書いてないところも多数あります。
時間が無かったとも言えます。否定はしません。

 前回FDでシリアに言わせるはずだった科白。
本当に忘れていたのですが。思い出しましたので言わせて見ました。

 本当に忘れてしまうとは想定外だったので
マジびびっていたのですが、思い出す事が出来たので良かったです。

 ちなみに、熱砂の誓い? と思われた方は正解です。
あれは前FDで出来なかった分をやるものでしたので。
同じくFDである今回の作品も設定は互換があります。

 貴重なるお時間を筆不精なるわたくしめの創作閲覧に使って戴き、
誠に感謝しております。有難う御座いました。



カルネアデス E-mail karune@big.or.jp
カルネアデスの頁 http://www20.big.or.jp/~karune/gate.htm


 
映像特典
以降はオマケです。読みたい人はどうぞ。
 
憧れの情報部に入った。
憧れのテラーは居なかった。
個人としてテラーと会ってみたかった。
行方は不明らしい。

生きていれば、この裏の世界で生活していれば
出会うことがあるかもしれないと、淡い想いを抱いていた。

 
【俺】動くな。

【男】下にばかり、気を取られ過ぎましたか‥‥。

【俺】フン、ドブネズミが2匹、入り込んでいたらしい。

【女】あーら、可愛らしいハムスターあたりにしてくれない?

【俺】減らず口をたたくな。銃の中から弾倉を抜け。おっと、そっちの男は動くなよ。

【女】‥‥‥‥。

【男】言われたとおりにした方が、いいですな。

【俺】早くしろ。

【女】わかったわ‥‥。

カチャッ‥‥。

【女】これでいい?

【俺】弾倉を抜かれたら弾は出まい。

【女】へぇ、そう思う?

【俺】おい、向こうの男。

【男】なんですかな。

【俺】今度は貴様の番だ。

【男】はい、何でしょう。

【俺】腋の物を出せ。おっと、ゆっくりやれよ。

【男】はい。

カチャッ。

【女】ごめんあそばせ!

ダーン!

【俺】むぅ‥‥。

ドサッ‥‥。

 
【女】さっ、オジサマ‥‥こっちよ!

【声1】何だ今の音は!

【声2】侵入者だ!

【声3】武器を持って迅速に対処しろ!

 
‥‥な、何が起きたんだ? 体に力が入らない‥‥。くっ‥‥。
 
【男】やりますな、法条さん。

【女】なにが?

【男】チャンバーに一発、マガジンを抜いても一発だけ弾は出る。FBIなどで教えられるやり方ですな。

【女】ま、敵が銃の弾倉を抜いたからって、安心しないことね。

【声1】向こうを捜せ!

【声2】敵は2人だっ、早くしろ!

 
‥‥え‥‥‥‥FBI、くくく‥‥俺は無知だったんだ。

エルディア情報部に入ったのに‥‥テラーに、テラーにあえ――――。

 
俺の意識は遠退いて行った‥‥。
 

映像特典

 ということで終わっていなかったりしますが、
切り上げマークがあったので読みたい方だけ読んで戴いていると思います。

 シリアと言えば情報部なので、誉めているのかけなしているのか不明ですが
エルディア情報部というものにはそれなりの敬意と言うかをはらいたいです。

 そんなこんなで汚点というべき事件を一つだけ解消しておこうかなと。
これのお蔭でオヤっさんが抜ける時に一掃してしまうと言う場景が出来た訳なのですけどね。

 だからFBIでも基本とされる方法を見落としてしまったと言う所です。
見落とすと言うより実際に知らなかったと言う事で。

 オヤっさんが教えた者達はみんなこの方法を知っていますけど。
殺人集団なのに‥‥と言う事です。

 私的な事ですのでおもいっきし余談として、エルディア情報部スコアリストは
「オヤっさん」「シリア=フラット」「フェイスレス」(笑)「テラー」の順です。

 こんな機会でもないとこんな事書く好機が無いので、オマケと言う事で。
逢いたかったテラーにはあえたのですけどね‥‥知らぬは仏だけ。


 
おまけ
 

技術的な事とか

 こんなところまで読んで戴いて恐縮です。今作品には色んな技術的なものを総動員しましたのでまとめがてら書いておきたいと思います。

 あ、フレームのは除きますよ。今回使っていませんので、ちなみに、使いこなせたらそれは貴方の技術です。ガンガン使ってやって下さい。



1.<center>

 初期作品以降、私の作品でもっとも良く見られる書法。

 本当に初期の初期作品、ナデシコの時に使っていたものです。中央に揃うのはいいのですが、次の文の頭がばらばらになるという不恰好さがあるためあまり使いたくありません。



1改.<center><TABLE><TR><TD>

 そこで、偶然にも<TABLE>タグと逢ってしまいました。

<TABLE>の前に<center>があると綺麗に真中に文章群が表示されます。

 まったくの偶然で出来たものだったのですが以降のHPレイアウトは全部これに変更されました(笑)

 ただ、これの欠点は<TABLE>の中に書かれた文章を全部読み込まなければ表示待ちになってしまうという欠点があります。

 偶然にも私には短い方が切り上げも始まりもやりやすいだろうと言う56kモデム使用者張りの言い訳と言うか何かがありましたので 文章は全般的に短めになっているので気付かれる方は少ないかと思います。ばれないように努力しました(笑)

 現在も56kモデムっすよ。オマケにPC98、Win95a(笑)



1改改.<center><TABLE><TR><TD><BLOCKQUOTE>

 上記の欠点を補うべく開発されたのが(初めからあったタグ群なのですけどね(笑))<BLOCKQUOTE>です。

<ul>は右の空白が無いので没。

<ol>は初めの空白が無いので没。

<cite><i>の効果が出る上、左右の空白が無いので没。

<blockquote><cite>と同様引用タグなのですが。一番適しているのでこれを採用。

<blockquote>はタグ数が多いので<ul>を使いたいところなのですが 右の空白が無いので‥‥と言う事になっております。

<br>タグ二つ並べるのだったら<p>タグにした方が半角一文字浮くと言う理由から採用してしまっている私としては短い方が‥‥と。



2.画面一杯の段落。<TABLE height="100%"><TD> </TD></TABLE>

 現時点では公開されていない4作品を混ぜ込んだ投稿作品で使った手法です。
改行<br>タグを並べまくるものなんでしたので、開発しました(笑)

 画面の高さ100%をテーブルで囲うという訳でたった一つの空白の為にブラウザ画面一つ分占領してしまうと言う実に効率的な♪

 元々左端と右端に同時に文字を書く為に使用した
<TABLE width="100%"><TD> </TD></TABLE>の縦バージョンです。



3.改行タグ。<br><br><p></p>

<br>タグ二つ並べるのだったら<p>タグにした方が半角一文字浮く(笑)と言う理屈があります。

<br><br>

<p>
</p>

と言う事です、あを囲まない理由は囲んでも囲まなくても段落は発生しないので無駄タグになってしまうという理由からです。

 表示速度向上とあとWeb領域がこんできそうな予感がしていたので最適かも兼ねていろいろ弄っていた時に出来た産物です。

 ちなみに<p></p>だけでは段落は出来ません。
<p> </p>こうしないとダメですのでそれだったら<br><br>の方が軽いですよ♪



4.補足。

 ブラウザによって表示方法が違います。

 有名なのが通称方言で<form>を使うところでInternet Explorerは無しでも動く仕様になっています。Netscapeでは必要です。だから、Internet Explorerで表示されていてもNetscapeで見たら笑えるHPが多いです。今はもう凄い事になっているのではないかと思いますが。大抵環境はInternet Explorerでしょうから。Netscapeユーザーの優越感と言った所かもしれません。オマケにこのタグは使い勝手が良く、頻繁に使われるタグです。だからこそ落とし穴だったりしますけど‥‥。

 私は創作読むのに文字サイズがつらいのでしぶしぶInternet Explorerになっています。 だからNetscapeで回っていません(笑)

 大抵の作品は両ブラウザで見れるように最適化していますが、使うタグが限られているのでそんな確認する事はまぁ稀です。今回みたいな時は死ぬほど確認が入ります(爆

<TABLE height="100%"><TD> </TD></TABLE>はInternet Explorer上で
<TABLE height="100%"> </TABLE>と出来ますがNetscapeでは無かった事にしてください状態ですので、実際にやってみたら発動しなかったので(笑)

 あ、補足ついでにもう一言。
「 」は全角スペースで無ければ発動しません。
「 」半角スペースでは殆どの場合発動してくれません。多分。



5.スタイルシートは?

 結局、スタイルシート使えということになるのでしょうけどお断りします。文字サイズは均一だし、文字の表示最高にしてもスタイルシート無しの文字に比べれば「壊れているのかこれ」状態ですので。

 あと、Internet Explorerのアップデートは恐怖ですので昔のブラウザを使っている人に対する配慮でもあります。

 スタイルシートが読み込めない環境でも問題はありませんが、スタイルシート分のタグが「表示とかに影響を与えない」わりに「不必要な部分も読み込んで無駄に表示の時間を食う」と言う弊害が起こりますので使いません。以上。



6.何でこういう事書くかって?

 創作作品をファイルサイズでしか見れない人が増えていますから、それだけです。無駄タグ除いたら正味の文章どれだけだと思っているのだか(笑)

 まぁ、そういうのを自慢の種としている人は中々呆れたと言う事で。自分でタグ付けしている人、あまり居ないでしょう?

 HTML製作ソフトに頼るのは初めだけにしておきましょうね。

 私は初めからメモ帳で組んでますから(笑)

 私のは殆ど正味のサイズですけど、無駄タグは無いですよ。殆どね。

 では、本当に最後のオマケ、没予告編をどうぞ(笑)


 
カルネアデスのEVEFD企画2予告編♪
 
私は物心付いた時から、戦っていた。

死とは常に隣り合わせだった。

母親は死んだ。父親は‥‥。

 






 
母たる大地に誓おう、この想い。忘れない為に‥‥。

 




 
亡霊が動き出した。

もう止まらない、止める事は不可能に近い。

動く前に止めるしか術は無かったから‥‥。
 
そして‥‥

 
憎しみの底に映えるもの
 
「おやすみなさい、私の可愛い――――――」
 
EVE FD企画2 用作品

シリア=フラット

熱砂の嵐

 
予告編ってどうやってつくりゃぁイィんだか (^^;