<決意>
作者 WIZ
中東に位置する砂漠の国エルディアは、文明的にも政治的にも、まだまだ先進国には及ばない発展途上国の1つである。
しかし、裏の技術力、バイオテクノロジーにおいては他に類を見ない程、突出した技術力を持つ国でもある。
いや持つ国であったというように、過去形で言い表す方が適当であろう。
君主制の政治体制を持つこの国では、昨今新しい国王、いや女王が誕生したばかりである。
その女王の名は、プリシア=レム=クライム。
まだ18歳の若さながら王位を継承し、女王の座に就いた女性である。
しかし、その王位継承の裏には、大きな悲しみを伴う事件が起きていた。
表向きにはトリスタン号と呼ばれる、王位継承の戴冠式をおこなった客船の沈没事故が起こり、
その際にエルディア国の重鎮達が、逃げる事が出来ずに亡くなったとされている。
しかし実際には、前国王派がCプロジェクトと呼ばれるバイオテクノロジー技術を使用し、プリシアのクローン「μ-101」を生み出し、
再び前国王による恐怖政治の再来を計っていた。
μ-101は、前国王の記憶を移植され、前国王の意識が眠っている間は、エルディア外交大使「ロス=御堂」の娘、「御堂 真弥子」として、
再びエルディアの国王の地位に就こうとしていた。
しかし、あまぎ探偵事務所所長「天城 小次郎」や、内閣調査室のエージェント「法条 まりな」を始めとする様々な人間が、
プリシアを守ろうと、真弥子を守ろうと、前国王の野望を打ち砕こうとした様々な思いの中、
その前国王派の計画は失敗に終わり、プリシアが女王の座に就く事になった。
しかし、プリシアの分身でもあり、姉妹でもある真弥子は、深い眠りにつく事となり、事件の真実を知る3人、
プリシア、小次郎、まりなの3人の心に、消える事の無い大きな傷を残す事になった。
ある日の午後、プリシアは執務室にて、とある書類に目を通していた。
国民の幸せを省みない政治を行なってきた前国王は、自分の地位を守る為に、国民の学力水準の向上が起きない様、
教育施設の充実などの政策は、一切行なって来なかった。
現在のエルディアは、未だ自分の名前すら書けない者がほとんどであり、プリシアはその事に心を痛めていた。
プリシアが今、目を通している書類は、日本における小学校の建造を思案するための書類である。
プリシアは、書類全てに一通り目を通すと、向かいに座っている女性に話しかける。
プリシア「ふぅ、やはり日本の様な義務教育制は、是非導入すべき様ですね、リゼル」
リゼルと呼ばれた向かいに座っている女性の名は、リゼル・エリシュロス。
プリシアの側近の1人であり、知恵袋的存在でもある。
現在、プリシアがもっとも信頼を寄せている人間であり、政策などについては相談する事も多かった。
リゼルも、プリシアの人柄に惹かれてか、惜しみない協力をしている様である。
リゼル「はい。我が国の発展を考えるのであれば、国民の学力水準の向上は絶対必要でございます」
プリシア「そうですね。しかし、まだ我が国にはそれだけの施設を作る余裕が無いのが問題ですね」
リゼル「はい。それに、学校を作るにしても、教師となるべき者がおりません」
プリシア「教師・・・。そういう問題もありますね。やはりなかなか難しいものですね」
リゼル「は。しかし、難しい事であってもやりとげねば、発展を望めぬというのもまた事実でございます」
プリシア「勿論判っています。この位で諦めたりはしませんよ」
リゼル「はい、その為にも早急に具体策を講じましょう」
プリシア「そうですね。とりあえず教師をどうするかをまず話し合うとしましょう」
リゼル「はい、わかりました」
そういうと、プリシアとリゼルは新しい資料を机の上に用意し始めた。
リゼル「ところでプリシア様、1つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
プリシア「はい、なんでしょう」
リゼル「その花、もしかしてラヴェートの花ですか?」
リゼルはプリシアが胸に飾っている青い花に目を止め尋ねた。
プリシア「これですか? そうです。先日孤児院を慰問した時に、孤児の1人から貰ったものです。綺麗でしょう?」
リゼル「はい、とても。ラヴェートの花といえば伝説にもなるほどの花ですからね」
プリシア「伝説? ああ、あの伝説ですね。ラヴェートは強い思いを叶えるという」
リゼル「はっ。私も小さい頃、ラヴェートの伝説には憧れていた事がありました」
プリシア「私もあのおとぎ話は随分聞かされたものです」
リゼル「そうですか。ああいう夢のある国をつくる為にも、頑張らなくてはなりませんね」
プリシア「そうですね。では次の政策について話し合うとしましょう」
プリシアはそう言うと、リゼルと学校を作るための政策を話し合った。
結局、この日の執務が終わったのは日付が変わってからの事であった。
プリシアは、女王としての責務にひたすら追われるだけの1日がほとんどである。
日本であれば、同年代の者はそのほとんどが、責任などとは無縁の生活をしている筈である。
いや、少なくとも、国を背負わなければならない程の責任を背負った人間は皆無であろう。
しかし、プリシアは常に前向きな姿勢で政策に望んでいた。
プリシアへの国民からの支持はかなり厚いものであった。
その気持ちの根底あるもの。それは、助けられなかった真弥子との誓い。
自分と同じでありながら、自分と違い眠りにつく事を余儀なくされたもう1人の自分・・・。
彼女に渡されたエルディア女王の座は、プリシアにとっては彼女と交わした大きな約束であった。
しかし、気持ちが前向きであろうと、体がついてくるかは別問題である。
確実に、プリシアの体を疲労が蝕んでいた・・・。
その日の朝は、プリシアはいつになく、体の不調を感じていた。
連日のハードなスケジュールによるものだという事は、本人にも良く判っていた。
しかし、今日の執務には、外国の大使との会食が予定されていた。
無論、自分の立場に重責を感じるプリシアには、それを訴えるつもりなど毛頭無く、
自分の体調の不良を、ひた隠しにするつもりであった。
リゼル「プリシア様、お顔の色が優れない様ですが・・・」
プリシア「・・・大丈夫です」
リゼル「ご無理をなさらないで下さい。プリシア様のお体は、もうお1人のものではないのですよ?」
プリシア「しかし、今日の会食に急遽欠席すれば、大使の機嫌を損ねてしまうでしょう」
リゼル「それはそうですが・・・」
プリシア「リゼル、私はこの国の女王なのです。私が我侭を言う訳にはいかないのですよ」
リゼル「しかし、プリシア様にもしもの事があったら・・・」
プリシア「この機会を逃せば、エルディアの発展は益々難しくなってしまいます」
リゼル「・・・・・・・・・」
プリシア「私は立ち止まる訳にはいかないのです」
そう言うと、プリシアはその場を後にした。
リゼルは心配そうな目で、ただプリシアの背中を見つめるばかりであった。
そして昼下がり、外国の大使との会食は予定通り行なわれた。
プリシアの体調は、時間を追う毎に悪くなっていき、すでに倒れる寸前であった。
しかしプリシアはなんとか会食を終え、大使を送りだした。
だが、その直後、プリシアは気を失い倒れた・・・。
プリシアの胸に飾られたラヴェートの花は、ただ悲しく輝いていた。
???「・・・・・・ア」
???「・・・・シア」
???「プリシア」
プリシアは自分の名前を呼ばれた様な気がして起きた。
プリシア「・・・ここは?」
起きたプリシアの目に写ったのは、不思議な場所であった。
とても暗い場所なのだが、不思議と視界は妨げられていない。
青く輝く光が差し込んでいる広い空間だった。
プリシアは見た事の無い場所にいる自分に驚き、あわてて辺りを見回した。
しかし周囲には何もなく、ただ広い空間が広がっているだけであった。
???「プリシア」
プリシア「キャッ!」
突然後ろから声を掛けられ、プリシアはビックリした。
しかしその聞き覚えがある声を聞いて、慌てて振り返った。
そこに立っていたのは真弥子であった。
プリシア「ま、真弥子さん?」
真弥子「久しぶりね、プリシア」
プリシア「えっ、何故、なっなんで突然こんなところに?」
プリシアは突然の事で錯乱してしまった。
真弥子「落ち着いて、プリシア。これは夢の中なのよ」
プリシア「・・・・・・夢?」
真弥子「そうよ、ここはあなたの夢の中。強い思いとあの花が与えてくれた奇跡の時間よ」
プリシア「あの花ってまさかラヴェートの伝説?」
真弥子「ええ、あの伝説の花の力で、一時的に私もあなたと話をする事ができるのよ」
プリシア「まさかあのおとぎ話が本当だったなんて・・・」
真弥子「ほんと私も嬉しいわ。ところでどう、最近のエルディアは?」
プリシア「そうですね、まだまだ色々と進めていかない政策が沢山あります」
真弥子「そう。頑張ってほしいわ」
プリシア「はい、もちろんです。あなたが本当に目覚めるまで、私はできる限りの事をしようと思っています」
真弥子「でも無理はしないで。あなた、体調が悪いのに休みもしなかったでしょう?」
プリシア「えっ!」
真弥子「あなたはこれからのエルディアには絶対に必要な人なんだから、もっと体を大切にしないと」
プリシア「・・・・・・・・・」
真弥子「焦る必要はないわ。あなたならきっと出来るから」
プリシア「・・・・・・・・・」
真弥子「もうあなたの体はあなた1人のものじゃない。そのことは忘れないで」
プリシア「そうですね。確かに私、焦っていたのかも知れません」
真弥子「・・・・・・・・・」
プリシア「正直、解決しなければいけない問題は山積み、躍進的な改革はほとんど出来ない」
プリシア「そんな気持ちのどこかに、焦燥感があったのかも知れません」
真弥子「自分1人に出来る事は、けして多くない。だから多くの人が寄り添って1つの国を作るのよ」
プリシア「そうですね。私はもっと他人を信じなければいけないですね」
真弥子「あなたの周りにはあなたの事を心配してくれている人が沢山いるわ」
真弥子「その人達の想いに報いる為にも頑張って、プリシア」
プリシア「ありがとう、真弥子さん」
真弥子「ふう、これで安心してまた眠りにつく事が出来そうね」
プリシア「えっ、もう行ってしまうのですか?」
真弥子「ええ、ラヴェートの伝説はほんの1瞬。もうお別れの時間よ」
プリシア「そんな・・・」
真弥子「そんな悲しい顔をしないで。私はいつかあなたやまりなさん、小次郎がきっと私を目覚めさせてくれると信じているわ」
プリシア「・・・・・・はい」
真弥子「私はその時を楽しみにしている。その時また、みんなで会いましょう」
そう言うと、だんだんと真弥子の姿が薄くなリ始めた。
プリシア「はい、私も楽しみにしております。待っていて下さい」
プリシア「必ずその日を迎えてみせます」
プリシアは、涙に濡れた目で、しっかりと真弥子を見つめながら言った。
真弥子「・・・・・・あり・・が・・とう」
真弥子の姿はやがて消えていった。
プリシアは真弥子の消えてしまった空間を見つめながら、堅い決意を胸に刻んだ。
プリシア「いつか、必ず・・・」
プリシアの寝室で眠っているプリシアを、専属の医師やリゼル、その他の側近達が見舞っていた。
医師の診断では一過性の過労であり、生命に別状は無いとの事で、一同は比較的落ちついていた。
リゼル「プリシア様、何か良い夢でも見られているのでしょうか? とても嬉しそうですね」
医師「そうですな。是非これが良い休暇になってもらえれば良いですな」
まわりの人間が気付くほど、プリシアは幸せそうな顔で眠っていた。
その胸の上では、ラヴェートが青く神秘的に輝いていた・・・。
「いつか、必ず・・・」
どうも、初めまして。この作品の筆者のWIZと申します。
この度はFD企画の第2弾、プリシアの担当という大きな企画に参加させて頂きました。
私にとってEVEという作品は人生観を変えてしまった作品であり、
この作品がなければ小説を書いたり、自分のHPを持つ事などは無かったと思っております。
文才の無い私には、全てを表現出来ませんでした。
しかし、少しでも多くの方々にEVEという作品の良さを伝えられたら嬉しいと思っております。
是非、EVEをやった事の無い方は、これを機にやってみて頂けたら嬉しく思います。
また今回、FD企画に参加された方々は勿論、主催者であるやろひろえさんに惜しみない賞賛を送りたいと思います。
皆さん、ご苦労様でした。またやりましょう(笑)
それでは・・・。
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管理人 WIZ wiz_lord@hotmail.com