一週間後────
小次郎「どうも」
米「はい、どうもぉ」
俺は事務所を訪ねてきた米さんに挨拶を交わすと、席に誘導した。
小次郎「さて、結果ですが…」
米「はい」
小次郎「…どうです? その後は…」
正直胸ドキドキだ。
失敗していたら、俺の手腕が落ちたって事になる。
…というよりも、あの発砲がマズかったんだよ。
そもそも幸多のヤツがあんなタンカを切らなきゃ、早急に終わらせずに、じっくりと片付けるはずだったのに…
…って、幸多を責めたってしょうがないんだがな。
それを計算に入れられなかった俺のミスさ。
思春期のガキの心理を読むのは、かなり大変だ。
平和ボケして頭が鈍ったのはやはり事実か…
米「はい、イジメていた子達と、今は仲良くやっていますよ」
小次郎「…へ?」
米「それに、今まで何に対しても消極的だったあの子が、色んな事に積極的になってくれて…」
小次郎「……」
米「本当に感謝しています、天城小次郎所長さん」
小次郎「…いえいえ、それは良かった」
俺は自然に微笑んでいた。
そうか…
本当に良かった。
米「それでは、今回の報酬ですが…」
小次郎「…ん、あぁ」
米「約束では100万円キャッシュでしたね」
恭子「…♪」
小次郎「……」
米「はい、どうぞ」
米ちゃんは鞄から札束を取り出すと、俺に差し出してきた。
俺…
は……
小次郎「……」
その札束を受け取ると、数を数え始めた。
米「ホホホッ、大丈夫ですよ、ちゃんと100枚あります」
米ちゃんはそんな俺を見てどう思ったのだろうか。
大体見当はつくが…
小次郎「49、50っ、と…」
俺は50を数え終わったところで、札束を整え、米ちゃんに返した。
恭子「!?」
米「…何でしょう?」
小次郎「俺から、幸多へ…今回の件での、プレゼントです。何かアイツの好きなモンでも、これで買ってやって下さい」
米「いえ、そんな…返却していただかなくても、お金ならありますから」
小次郎「いや…俺が、自分で働いて、稼いだ金で…アイツにプレゼントするんです。残りの50万は、そこにいる氷室へ全額あげますよ」
米「……」
恭子「……」
米ちゃんも氷室も、目が点になっている。
米「フフッ…小次郎さん、格好良すぎです」
小次郎「ハハッ、このマダムキラー小次郎に惚れないでくださいよ」
米「ええ…それでは、幸多への豪勢なプレゼントに、使わせて頂きますね」
小次郎「ああ…アイツに、ヨロシク言っておいてください」
米「…何て?」
小次郎「そうだな…」
……
小次郎「『お前も日本一のいい人目指して頑張れよ』って」
米「フフッ…はいな」
小次郎「……」
米ちゃんは今出て行った。
恭子「小次郎…どうして?」
小次郎「何がだ?」
恭子「プレゼント…って…」
小次郎「あぁ…幸多からは、50万円じゃ安いくらいの、純粋な心を見せて貰ったからな」
恭子「え?」
小次郎「金じゃ買えないモンを貰ったのさ…ホラ、氷室。今回の報酬の50万円だ。先月と今月の給料にしといてくれ」
恭子「…イイの?」
小次郎「当たり前だろ。所員に給料を支払わない所長が何処にいる?」
恭子「……」
小次郎「無言で指を差すな!」
恭子「フフッ…」
小次郎「ったく…」
俺はコーヒーを煎れようと台所に行こうとした。
恭子「小次郎!」
その俺の腕を、氷室がギュッと掴む。
小次郎「な、何だ?」
恭子「飲みに行こっ」
小次郎「飲みに…だぁ? そんな金は無…」
恭子「フッフ〜ン」
と言いかけた俺に、氷室は俺が今さっき渡した札束を突き出す。
小次郎「…って、あ、あのな…」
恭子「むっ」
と言いかけた俺を再び氷室はシャットアウトする。
小次郎「な、何だぁ…?」
恭子「今回小次郎は頑張ったから、私からのプレゼントッ」
小次郎「……」
恭子「私が、自分で働いて、稼いだお金で…小次郎にプレゼントするんです。文句は言わせませんよ、と」
氷室は俺がさっき米ちゃんに言った言葉を、口調ごとマネした。
小次郎「プッ…ククッ…」
俺はついつい吹き出してしまう。
小次郎「ハハハッ…サンキュ、な…氷室」
恭子「フフッ…それじゃ、行こっ」
小次郎「ああ、ああ、分かった分かった。久々だからって、そうはしゃぐなって」
…と、これで今回の依頼は無事解決したわけだが…
腑に落ちない点が一つだけある。
それは…
理事長の件だ。
タチの悪いガキの親だぜ?
絶対何かしてくると思ったんだが…
…よし、決めた。
俺は…
確かめてみよう
(ひろえ創作【EVE the Last Nightmare of Eldia】読者推奨)
…やはりやめた
(ひろえ創作【EVE the Last Nightmare of Eldia】非読者推奨)